“ノギ”の注意喚起と症例報告【善福寺緑地公園は要注意です】
こんにちわ、ダリア動物病院です。
梅雨の半ばですが晴れ間も多く、外に遊びにでかけるワンちゃんも多い事と思います。
先日より外来で良く見かけるものとして”ノギ”による刺入(皮膚に突き刺さる)、そして
耳道内への混入が相次いでいます。
ご家族の方々からの情報によると、ノギ(ネコジャラシやオヒシバ、ススキなどのイネ科植物)
は善福寺緑地公園に多く自生・繁殖しており、ここ数年でかなり数が増えているようです。
善福寺緑地公園は多くのワンちゃんたちが集まる絶好のスポットですが、ノギが多くある
場所ではご家族の皆さまが良く注意してあげ、「一人で遊ばせない」・「寝転んだり
させない」といった工夫が必要であると考えられます。
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以下当院での症例です。
オス・2歳のゴールデン・レトリバーのワンちゃんが耳を振るという主訴で来院されました。
来院1ヶ月前にもマラセチア性外耳炎という耳の疾患を患っていましたが、今回は耳鏡検査
において右耳の耳道内・鼓膜手前に細長い突起を何本も持つ黒褐色の細長い異物が認められ
ました。院内での耳洗浄ののち、ご自宅でも数日間に渡って洗浄処置を行っていただきましたが
奥に嵌ってしまった状態で全く動かず、鎮静処置下での摘出を計画致しました。
今回の処置では約10分間という超短時間作用型の鎮静薬で、処置終了後30分程度で普通に
立ち上がり元気に歩いて帰ることが出来る、とても安全性の高いお薬を用いました。
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耳道内のオトスコープ画像です。鼓膜手前を映していますが、写真の右手前側に向かって
硬い毛のような突起が複数本観察されます。
この異物を、内視鏡で用いるファイバー鉗子で掴み、引きずりだしました。
異物の正体はノギで、ノギの周囲には黒褐色の耳垢が付着していました。
処置後のオトスコープ画像です。異物は綺麗に取る事が出来ました。
異物により鼓膜は僅かに穿孔していましたが、2週間もすれば修復されて元通りに
なると考えられます。
耳に混入したノギは今回の症例のように、耳垢が付着して滑り止めのような作用が働いて
しまう事、そして広がった穂先が”アンカー”のように働いて頑固に嵌ってしまう事が多いため、
洗浄での排出は困難を極めます。また、今回は鼓膜を僅かに損傷した程度で済んだのが
不幸中の幸いでしたが、これがもし鼓膜を通りぬけて中耳・内耳へと進んだ場合、最悪脳に
炎症が起きるケースも考えられます。
その場合、摘出には”鼓室法切開術”という頭蓋の骨を切開して行う手術が必要になる事も
あり、動物たちにかかる負担や痛みは倍増し、命の危険すら想定されてしまうような事態に
なりかねません。
皆様におかれましてはよくよく注意してワンちゃん(外にでるネコちゃんも!)に気を配って
いただき、このような事態を未然に防ぐ努力をしていただければと思います。
長くなりましたがご覧いただきありがとうございました。
お耳の疾患でお困りの事がありましたら、なんでもお気軽にご相談下さいね。